クリスタル・ウィッシュ・ジャーニーは、私たちに何を伝えたかったのか?

2016年4月15日。東京ディズニーシーは、15thスペシャルプログラムとして、『クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー』という水上ショーをスタートさせました。

(以下『クリスタル・ウィッシュ・ジャーニー』は、『CWJ』と略します)

f:id:PinoDisney1923:20180109193528j:plain

アニバーサリーの一年間限定ショーのためだけに、豪華なバージが三台つくられ、華やかな印象のあるCWJ

 

華やかな3つのバージは、赤・青・緑のクリスタルがモチーフに作られており、大きなコンパス部分の電飾が特徴的でした。

4月15日前日のプレビューナイトでは、その装飾を存分に見せつけるかのように、CWJの夜公演がありました。

その公演では、サーチライトが、赤や青、そして緑に変化し、その日のためだけとは思えないほどに、照明台本がよく出来ていました。無論、夜公演の評価は非常に高く、通常日でも夜公演を希望する声が多く聞かれました。

その時に、『こんなに電飾を多く使っているのに、昼公演だけというのは勿体ないんじゃないか?』と思った方も多いのではないでしょうか。

今回は、それらから見えてくる様々な謎に迫ると同時に、そこから見えてきた、CWJが持つ真のメッセージを考えてみたいと思います。

 

CWJには原案がある?

東京ディズニーシーで実際に行われたCWJというショーには、直前まで進められていた”原案”が存在します。

と、言われても、ああそうなのか。と納得できる人はいないと思います。

ので、まずは、それを裏付ける”原案”の名残を紹介しましょう。

それは、この東京ディズニーシー15thのカギである存在の、様々な色に輝くクリスタルの設定にも、一つ残っています。

 

f:id:PinoDisney1923:20180109203318j:plain

©Disney

 

CWJではショーが始まる前に、クリスタルの世界からの使者がやってきて、クリスタルについて説明をしてくれますね。

 

クリスタルの世界。それは、この海を旅する旅人たちの“願い”や“想い”が集まり、それが結晶化した、光輝く特別な世界。

そして、ここにあるのが、今回のジャーニーを光り輝かせるキーとなるクリスタルです。

私たちのクリスタルには、それぞれ深い意味が込められています。それを知ることが出来た時、クリスタルがみなさんを、新しい旅へとご案内するでしょう。

 

そして、ゲストである我々は、赤・青・緑のクリスタルが持つ“深い意味”を知り、願いをクリスタルに届け、新しい旅に出るというストーリーになっています。

クリスタルの“本当の意味”というのは、“赤・青・緑のクリスタル。つまり、愛情・友情・元気が一つに合わさると、どんな困難な旅でも乗り越えられる。だから、ミッキーのクリスタルの色は、白色なんだよ”

というものでしょう。しかし、公式の画像には主要なクリスタルとして、ミッキーの透明なクリスタルや、赤・青・緑のクリスタル以外に他4つ存在し、ミッキーのクリスタル抜きだと七つ存在することになります。

そして、キャラクターそれぞれの背景には、自分の持つクリスタルの色がデザインされています。そういう流れになると、ミッキーの背景は当然白色(透明)になるはずなのですが、虹色がデザインされているのが分かります。

 

これは、

“ミニーやドナルド、グーフィーたちのクリスタルは光るが、ミッキーのクリスタルだけ光らなかった。しかし、ミッキーのクリスタルに願いが集まると、そのクリスタルは、他主要クリスタル7色全ての色に光り、七色、つまり虹が旅の行き先を照らす”

というストーリーが原案だったためと言われています。

そのための名残が、公式の画像やエントランスに飾られていた、イヤー・オブ・ウィッシュ号などに残されているのです。

 

そしてもう一つが、前述した夜公演の異様な完成度です。

これは、CWJが、元々夜公演ベースで作られていたためだそうです。夜公演では、レーザーが使われ、最後のコンパスがミッキーシェイプになるシーンで、大いに活躍する予定でした。

 

“ミッキーシェイプの透明な耳部分にレーザーが当たると、反射して水面が七色に輝く”というのが、本来の仕様だったようです。まさしく、虹が旅の行き先を照らすように。

その名残として、あの耳の部分は何か光によって反射した時、キラキラと七色に反射します。良かったら、動画などで確認してみてください。

 

このような名残は、様々なところに残されていたりするので、興味がある方は、調べてみると面白いかもしれません。

 

CWJが目指したエテールノの完成

CWJは、東京ディズニーシーが開園して間もなく始まった、ポルト・パラディーゾ・ウォーターカーニバル~エテールノ~(以下『エテールノ』と略す)の再演を目指していました。それを示すかのように、D23EXPOjapan2015のTDR特別公演では、フィナーレにエテールノが使われていましたね。

 

f:id:PinoDisney1923:20180110192752j:plain

©Disney

 

 無論、CWJとエテールノには多くの類似点があります。

  • 旅立ちがテーマであること
  • ミッキー&フレンズが、夢を与える存在と確認していること
  • 行き先は、輝かしい未来であること

 と、いうのがありますが、一番分かりやすいのは、やはり旅立ちがテーマであることでしょうか。エテールノでも、CWJでも、新たに旅立つことがメインテーマとなっています。

そしてCWJでは、エテールノで語られなかったことが、多く語られ、補足されています。

 

一番印象的だったのは、“夢”と“願い”の関係でしょうか。

それは、CWJ内でも、各キャラクターが、クリスタルに触れるシーンで歌とともに説明されています。

夢を運ぶものに、願いを託し、ともに旅を行こう輝き求め。キミのクリスタルは...

引用:CWJから一部抜粋

というところです。夢を運ぶものというのは、ミッキーたちのことですね。

対してエテールノでは、エテールノがかかり始めた時の、ミッキーとミニーのやり取りにあります。

 ミニー:本当に大切なものを守る気持ちがある限り、カーニバルは永遠に続くのです。

ミッキー:ミニー、僕たちの本当に大切なもの?

ミニー:たくさんの人々に、夢を与える事でしょう。

ミッキー:そう、僕たちの知らない世界が待っているんだ。さあ旅立とう!

 引用:エテールノから一部抜粋

こちらでもしっかり明言されていて、それは、この時に始まったようなニュアンスでさえありますね。

ここから見えてくるものとしては、願いというのを、私たちゲストはクリスタルに託し、ミッキーたちは夢を与えてくれるということです。

しかし、そもそも私たちゲストが託す“願い”とは何なのでしょうか。

それは、夢なのだと思います。願いというのは、客観的に見ればその人の夢になります。

本人の中では願いであるものが、傍からみれば夢になるのです。

その夢、つまり人々の願いとなるものを、ミッキーたちは与え続けているのです。

 

そしてその願いを、ゲストはそれぞれにクリスタルへ届けます。すると、その行き先であるそれぞれの夢、願いを、クリスタルが照らしてくれるのです。

 

このように、エテールノの足りない部分を、完成版エテールノとまで言えるCWJが補っているのです。

 

CWJで見直された、過去の捉え方

 CWJでは、一つだけエテールノと大きく違うメッセージがあります。

それは、過去の捉え方です。

CWJでは、エテールノから15年間続けてきた旅を一回仕切りなおして、新たな旅立ちをしようとしています。

ので、エテールノから始まった航海は、一度幕を閉じたことになります。新たな旅立ちを始める。それがCWJなのです。

これが何を意味するのかというと、エテールノで言われた

カーニバルは永遠に続くのです

-ミニー-

という“永遠”は、ここで終わることを示しています。

 過去は振り返らず、それを階段にして未来へ進もう。それが、東京ディズニーシー15thが持つ本当のメッセージなのです。

それを体現するかのように、東京ディズニーシー15thには、あの東京ディズニーシーには欠かせないアトラクションもクローズしましたね。そう、ストームライダーです。

この旅立ちは、D23ejでも一つのショーとして表現されました。

 

ストームライダーは、ポートディスカバリー全体のBGSに関わっていたり、ファンの間では、ケープコッドやロストリバーデルタなどとも関係が深いとされていました。

まさに、東京ディズニーシーならではといった、深いストーリーやテーマを持つアトラクションだったのです。しかし、クローズすることになってしまいます。

ですが、これは東京ディズニーシーの前進を意味しています。新たな開発の足かせになるBGSを、ついに外したのです。

良いか悪いかは賛否両論でしょう。しかし、東京ディズニーシーは生き物であり、成長が必要です。その成長を妨げる壁を、東京ディズニーシー15thは取っ払い、新たな冒険を始めようと、ストームライダーは旅立ったのです。

この時、どこか良い意味でも悪い意味でも、止まっていた東京ディズニーシーの歯車は、動き出したと言っていいでしょう。

 

さあ旅立とう、きらめく海へ

 新たな東京ディズニーシーが始まった15th。

エテールノでは東京ディズニーシーを目指し、今度は新たに、きらめく海、東京ディズニーシーを目指します。

旅の成り行きは、事前に分かるものではありません。しかしその先に、きらめくような、輝かしい未来があるのは事実なのではないでしょうか。

2019年にはソアリン。そして、今後は長期的な拡張が予定されています。

 

過去は振り返らず、前に進み続ける。そんな東京ディズニーシーは、まだ始まったばかりなのです。

 

 

 

Keep moving forward

前へ進みつづけよう      -Walt Disney-